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| 筆者: A.S. |
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以前は東武ロマンスカーという名称があったはずだが、いつ頃からそれが、スペーシアに変わってしまったのだろう?箱根に行く小田急ロマンスカーと混同されてしまうから、東武がこの名称を小田急に譲ってしまったのだろうか?など、のんきに考えながら、二人の外国人にお伴して東武浅草9:30発の華厳9号のキッブを自販機で購入しようしたら、禁煙席はすでに満席ではないか!2名の内、ひとりは喘息があるので、禁煙席でないとぜったい困る。駅員さんに相談をしたら、個室がまだ残っているとのこと。個室料(一部屋3600円)を支払い、スペーシア華厳9号に乗り込む。個室は前の乗客のタバコの臭いが残るものの、それほど気にはならない。二人掛けのシートが大きな車窓を挟み向かい合わせに配置され、室内空間はかなりゆとりがある。帰途もぜひ個室を利用しようと、三人の意見が一致し、一同、日光をめざす。
今回、私がお伴している外国人は、実は、クライアントではない。つまり、二人とも私の友人なのだ。一人はインドから遊びに来たアメリカ人で、もう一人は日本に長いこと住んでいるアメリカ人。私は二人のガイドを買ってでた、というわけだ。スペーシアの個室の中、ゆったりとシートにもたれる二人に向かって、日光に関する英文ガイドブックを読み上げる。一般席だったらこれはできないことだ。そして二人がお客様だったら、彼らの目の前でどうどうとガイドブックに書いてあるものを読むなんてできない。
日光に到着すると、天気予報通り、雨が降り出していた。東武日光駅から、世界遺産に登録されている輪王寺、東照宮、二荒山神社まで、徒歩20分。バスやハイヤーもあるけれど、今日の旅程は日光山の二社一寺巡りのみ。時間はたっぷりあるので歩くことにする。しかし、まずは栄養補給。日光は湯葉で有名であるが、駅前に並ぶ土産屋の二階で、美味しい湯葉刺しを出してくれる店がある。インドに住む彼は、生粋のベジタリアン。だから、湯葉刺しなんて、涙を流さんばかりに感激して食べてくれる。
日光のランドマークの一つに数えられる、大谷川にかかる神橋は現在修復中。あの赤い橋の姿が見られないのはさびしい。橋を渡って、国道を渡り、遊歩道を経て、輪王寺の入り口に到着。ここで二社一寺プラス薬師堂、大猷院の共通入場券を1000円で購入する。1000円も払うのに、英文パンプレットはおろか、和文パンフレットも用意されていないのは、疑問だ。世界遺産に登録され、国内、海外からの訪問客も増えているというのに、なぜ簡単なパンフレットでもいいから置かないのか?まず、これが素朴な疑問の一つである。
三仏堂で阿弥陀如来、千手観音、馬頭観音の三尊坐像を拝ませて頂き、お堂の外に出ようとしたところ、突然、民謡ともロックともつかないような凄まじい音楽が境内に鳴り響く。寺務所の職員に尋ねると、江戸開府400年記念のイベントで、今日はヨサコイ大会が開催されているとのこと。関東中心に各地からアマチュア・チームがやってきて、創作踊りを競い合う催しものらしい。曲はどれも今風にアレンジされていて、踊っている人たちの衣装やメイクは、かつてのタケノコ族(今の若い方たちは知らないと思うが、、)を彷彿させる。しかもステージ会場は2カ所に分かれていて、一つは東照宮に向かう参道、もう一つは東照宮五重の塔の真ん前を陣取っている。つまり2カ所から、大音量の音楽や踊りのかけ声が流れ出ているのである。
私とて生まれも育ちも東京は下町の江戸っ子なので、こういうお祭りごとは嫌いではない。むしろ好きな方だし、血が騒ぐ。しかし、なぜここがイベント会場に選ばれたのか?代々木公園とか、どこかの体育館とか、他に場所はなかったのだろうか?ここは8世紀に勝道上人が切り開いた霊験あらたかな日光山である。徳川家康公の神廟が、家光公の霊廟が置かれている神聖な場所である。しかもユネスコが認定した世界遺産!なのだ。なぜ、このようなイベントをこんな特別な場所で行う!?以上が第2の素朴な疑問である。
私たちは日本の伝統的な造形美と、時間を超越した空間を求めて、東京から2時間かけて、そして1000円の入場料を払ってやってきた。現代色に塗り替えられた、騒々しい踊りを見に来たのではない。今回のイベントの主催者と、日光山の管理者に声を大にして訴えたい。世界の遺産をもっと尊重して、そして、遺産を見にくる来訪者にも敬意を払ってほしい、と。
さすがに家光公の霊廟のある大猷院までは騒音は届いてこなかった。そばを歩いていく母娘も若い男女のカップルも、「やっと静かになったね」と、喜んでいた。大猷院へと続く石段を登って、後ろを振り返ると、紅葉があざやかにあたりの湿った空気を染めているのが見えた。雷門の二天と風神・雷神が、牡丹門の四夜叉が、人間を寄せ付けないかのごとく、力強いポーズをつくっているのが印象的であった。
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